春の京都旅で訪れた「長五郎餅」の本店。
そのお餅を口にした瞬間、私の頭の中にふと浮かんだのは、この小説『スピノザの診察室』でした。
あぁ、マチ先生も、きっと今ごろ、煎茶と一緒に長五郎餅を手にしているかもしれないなって——。
◆ こんな方におすすめの一冊です
- 心がちょっと疲れているとき、読書で癒されたい方
- 京都の暮らしに興味がある方
- 医療ものが苦手だけれど、やさしい物語には惹かれる方
- 町の人とのつながりや会話にほっこりしたい方
- 和菓子が好きな方(特に長五郎餅ファン!)
◆ あらすじと登場人物のー魅力(ネタバレなし)
主人公は、京都の町中にある地域病院で働く内科医・雄町哲郎(マチ先生)。
30代後半に差しかかった頃、最愛の妹を亡くし、残された甥・龍之介と暮らし始めます。
静かに時が流れる町のなかで、日々やってくる患者たちと向き合いながら、てつろう先生自身もまた、心にぽっかり空いた隙間と向き合っていくのです。
登場人物たちはみな、ごくふつうの人たち。
でもその中には、小さな孤独や悩み、やさしさや希望が詰まっていて——まるで京都の暮らしそのもののように、じんわりと心に染みてきます。
◆ 小説に登場する「長五郎餅」について
マチ先生の“テンションが上がる瞬間”として登場するのが「長五郎餅」。
仕事終わりの疲れた身体に、ふわっと届く和菓子のやさしさ。
先日、私も長五郎餅の本店を訪れ、本当にてつろう先生のような気持ちになりました。
あの上品な甘さと、しっとりやわらかな口どけ。
長い歴史が今に息づいていることを、口いっぱいに感じました。
そんな風に、本と現実がつながった瞬間って、たまらなく嬉しいですね。
長五郎餅について詳しく書いたレビュー記事はこちら↓
◆ 夏川草介さんのインタビューから
著者の夏川草介さんは、現役の医師として20年以上のキャリアを持ち、日々命と向き合ってこられました。
インタビューでは、「医療が題材ですが『奇跡』は起きません。腹黒い教授たちの権力闘争もないし、医者が『帰ってこい!』と絶叫しながら心臓マッサージをすることもない。しかし、奇跡や陰謀や絶叫よりもはるかに大切なことを、書ける限り書き記しました」と語られています。
また、「一生懸命に優しく生きることが、こんなにも美しくて、しかも愉快なことなのだということを発信し続けたいと思っています」とも述べられています。
これらの言葉からも、小説に込められた深い思いが伝わってきます。
◆ 読後の余韻と、心に残った言葉
マチ先生のセリフや、町の人々とのやり取りのなかに、「ひとは、癒しあいながら生きているのかもしれない」——そんな風に感じさせてくれる場面がいくつもあります。
大げさな奇跡ではなく、日々の積み重ねのなかにある“回復の兆し”。
そのことにそっと気づかせてくれる、まさに今の私に寄り添ってくれる一冊でした。
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◆ おわりに
心を癒すものは、本だったり、旅だったり、和菓子だったり。
そしてそれは、静かな時間のなかでふと出会うのかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
健康で、彩りのある日々を🍀


